職場の近くにあるってのも理由の一つだが、昼を富士そばで食うことが増えた。ご存知の通り、富士そばは有名チェーン店だ。しかし、味には店舗ごとに特徴がある。
付け合わせの天ぷら一つ取っても千差万別だ。
さらに言えば、テーブルに置いてある七味も恐らく差がある。
ジャパニーズファストフードの代表たる蕎麦屋だが、こいつには味の拡張性がある。
ファストフードで、簡素化されているからこそ、食う側にも技量が求められる。いかに美味く食うか。そういう取り組みの歴史の上に我々は立っている。
そもそも誰だ、最初に蕎麦にコロッケ入れようとか言い出した不届きものは。美味いじゃないか。
コロッケは汁を染み込ませて食うと美味い。しかし問題なのは、染み込ませてほぐれたコロッケが分散してしまうことだ。こうなると、汁を流し込むしかなくなる。蕎麦の汁の味は濃い。支配的と言ってもいい。そんなもんを流し込めば、口内に残るのはそばつゆの味のみ。それは厳しい。だから、いかにして染み込ませつつ崩さず食うか、ここに全神経を集中する。ソース?知らんな。
七味。万能の調味料だ。
冷たいそばにはわさび。温かいそばには七味だ。だがここにもトラップがある。
まず容器。長野県民ならおなじみの八幡屋磯五郎の容器。あれはよくできている。振って出る量がちょうどいい。そこを基準に、やたら出ちゃうやつ、出にくい奴がある。
俺の行く店舗の容器はガバガバだ。傾けたら全部出るだろう。そうなったらもう、そば食ってんのか七味食ってんのかわからなくなる。容器を見極め、いかに適量を注ぐか。覆水盆に返らず、七味も容器に帰らない。
何か具が乗った蕎麦の場合、ここも七味が難しいポイントだ。そのままかけたら、七味を受け止めるのは具になる。蕎麦に七味は合うが、具に必ずしも七味が合うとは限らない。天ぷらを七味で食えるか?
じゃあ、具を避けてかけるか。そうすると、どうしても偏りが出来る。さらに、具に注視している間に沈殿してしまう。
大事なのは、かけてから食うまでのタイムラグをいかになくすか。そして具といかにぶつけないようにするかということだ。
こうなってくると小手先のテクじゃ無理だ。確固撃破、それしかない。
具を食う、七味、蕎麦、具、七味、蕎麦…
このループ。落ち着かない。
だが待て。落ち着くために富士そばに来ているのか俺は?違うだろう。落ち着きたいなら喫茶店でタバコでもふかしてればいい。ファストフード店は何時間も粘るとこじゃないというのが俺の持論だ。
勝負だ勝負。安くて速いやつをいかに楽しむか。ただ掻き込めばいいってもんじゃない。質が求められる。
冷たい蕎麦とか、カップ麺との勝負に関してはまた後日。