吐き捨て系日記

もう30になっちゃう男が考えを整理するためにブツクサ綴る、ほんとにただの日記です。

【映画】ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア (1997年)

一番好きな映画は?と問われたらまずこれを挙げる。

 

あらすじ 

同じ病院で偶然出会った女好きのマーティンと気弱なルディ。実は二人とも、不治の病に侵され余命いくばくもない状態だった。末期患者の病棟に移された二人は、酒を飲んだ勢いで病院を抜け出し、ルディが「見たことがない」という海を目指して旅に出た。しかし、その時盗んだ車がマフィアのもので、トランクにはピストルと100万ドルが積んであった…

 

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ドイツ映画の中でも特にヒットした映画らしい。主演はティル・シュヴァイガーとヤン・ヨーゼフ・リーヴァース。

タクシードライバーをしていた監督のトーマス・ヤーンがティルに脚本を持ち込んで、それを気に入ったティルの働きで製作にこぎつけたという。なんかスタローンのロッキーみたいな話だな。

 

 俺がこの映画を見たのは偶然に近い。映画を見ることが楽しくなってきた時期に、「なんか面白いの無いかなー」とレンタルショップをうろついていて、上のジャケットが目に入った。

ジャケットカッコいいじゃん、ってことで見たわけだが、これがドはまりしてDVD買うまでになった。

 

この映画にちょいとでも触れる人が増えてくれたら良いなと思い、いくつかポイントに絞って紹介する。

 

コンパクトな映画

この映画の上映時間は87分。普通の映画にしては短い。

しかし、それでいて短いとも感じさせない、かといって長くも感じない絶妙な作りになっていると思う。

それは「緩急」によるところが大きい。二人の主人公は共に不治の病に侵されており、マーティンはその発作にしばしば苦しめられる。そのため、ゆったりとした時間やギャグのような展開の中でも「死」を忘れることが出来ない。

それが、この映画の時間間隔に影響を与えているように思える。

 

誰も不幸にならない

映画には様々な登場人物が出てくる。二人の他にも、少し変わった警察官、間抜けなマフィア、強盗に入られても全く動じない銀行員。

悪人はいるのだが、どこか憎めない。そして誰も傷つかない。

ドジをして怒られる下りはあるが、基本的に死人は出ない。泣く人もいない。凄惨な暴力も無い。

きれいごとと言えばきれいごとなのだが、ここまで徹底していると逆に清々しい。説教臭くないし。

 

海と死

序盤、マーティンとルディは酒を飲みながら語り合う。

 

マーティン「今天国で何が流行ってるか知ってるか?海がどれだけ美しいか語り合うことさ。日が沈んで真っ赤に染まった海の美しさをみんなで語り合うんだ。」

ルディ「…僕は海を見たことが無いんだ…」

マーティン「じゃあお前は仲間外れだな」

ルディ「それはイヤだ!」

 

 大体こんな感じ。こうして二人は海を見に行くことになる。そして道中、道端に飾られた美しい海の絵や、想像の海、様々な形で二人は「海」を夢見る。

ネタバレというわけではないが、最後に二人は「海」へたどり着く。その「海」の姿は二人の想像とは違っていた。

こうしてみるとわかりやすいが、この作品において「海」とは「死」そのものなのだ。不治の病に侵された二人はいずれ死ぬ。そこで二人は、自分の「死」について思いを巡らせる。それが絵画として描かれた美しい「海」=「死」だ。

自分がどうやって死ぬのか、それはその時にならないとわからない。この二人はその「死」に向かって旅を始める。そうして辿り着いた「海」の姿から何を感じたのか。

「天国の扉を叩いた二人」がこの映画のテーマなんだ。

 

序盤のギャグで、病院に忍び込んだマフィアの二人が、手術から目覚めた患者と交わす会話がある。

患者「ここは…天国?」

マフィア1「そうだ。俺がヨハネでこっちがパウロ

マフィア2(アラビア系)「アッラーアクバル」

患者「(気絶)」

 単なるギャグではなくて、ほんとに天使なのかもしれない。

 

名曲「Knockin' on heavens door」

www.youtube.com

 

言わずとしれた大名曲。オリジナルはボブ・ディラン

後にガンズ&ローゼスがカバーして、こちらもヒットした。

タイトルからわかる通り、この曲がラストに流れる。ドイツのバンドがカバーしたバージョンだが、ガンズのバージョンに近いアレンジになっている。

 

この曲が、「ここしかない!」という絶妙なタイミングで流れる。正直卑怯だろー、と思う。だって泣くしかないもの。

イントロのギターが鳴った瞬間に大号泣必至。

曲については改めて語ることは特にないです。

 

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正直、個人的には欠点らしい欠点が見当たらない映画ではある。強いて言えば、エンドロールの後はいらなくね?とか、二人の友情がちょっと近すぎるとか。

ともあれ、誰が見ても面白い映画だと思う。

前述したように、サクッと見れる映画なので、少しでも興味が湧いたら是非見てもらいたいですわ。