俺もそういう時期に来た、という実感がある。
ロックバンド「B-DASH」が結成から20年を持って解散することを発表した。
彼らは、俺にとって「初めて好きになったバンド」なのだ。「音楽を聞く楽しみ」の原体験と言ってもいい。
解散や活動休止というものはいつもどこかで遅かれ早かれやってくる。国民的アイドルのSMAPも解散した。あれもあれでショックではあったが、どこか他人事の部分もあった。
だが、自分の人生において非常に大きな存在であったグループの解散というのはやはりズシンくる。
いずれ来ると分かっていても、実際に来ると何か大きな喪失感というか、あるいは俺自身が年を重ねてしまったことを突き付けられているような、何とも言えない感覚になる。
ここからはホントに日記だが、俺がB-DASHと出会った頃のことを述懐したい。俺もこれからドンドン老けていく。今のうちに記しておきたい。
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2000年代初頭の話。
当時はCDがやたらめったら売れる時代。大物ロックバンドや女性ソロシンガーの曲がミリオン行くのは当たり前みたいな。
当時俺は中学生だった。個別の部屋も与えられ、ラジカセも買ってもらった。ただ、聞くものが無い。
俺の親父は典型的なロック世代。そんな親父は俺が音楽に興味を持ったことに喜び、洋楽の名盤を何枚も買ってくれた。ビートルズやディープパープル、CCRやドゥービーブラザーズをよく聞いてたな。
ただ、それはそれで良い音楽なんだけれど「俺の音楽」ではない。
そしてテレビから聞こえてくる音楽も。カッコイイし、良い歌なんだけれどリスナーとしての当事者意識が無かったというか、「俺の」って感じは無かった。
そんな時、隣の家に住んでいた友人から雑誌をもらう。
ストリートロックファイル
日本のインディーズバンドを中心に紹介する雑誌だった。インタビューやライブレポートの他に、掲載されたバンドの曲が合計20曲近く入ったCDが付いているという画期的な雑誌だ。
それを読んでいくうちに、日本のインディーズシーンというのに興味を持つ。175Rやシャカラビッツのようなポップパンク、ガガガSPやGOING STEADYのような青春系のパンク、そんな中でB-DASHに出会う。
俺が感じたのは「近さ」だった。
物凄いスキルを見せつけるわけではなく、青春系の激しい激情をぶつけるわけでもなく、ひたすら聞いていて楽しいロックだった。
いわゆる「適当めちゃくちゃ語」で構成された、響きしかない歌詞。抜群のポップセンス。親しみのあるルックス。
他のバンドには無い、「近さ」がある。当時の俺はそう感じていた。つまりは、憧れを持った。
「俺もああなりたい!」そう思える初めての存在だったと思う。
そこから俺は様々な音楽を聞いていくようになるわけだが、やはりベースはB-DASHの原体験にあった。
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やっぱり切ないし悲しいんだけれど、だからこそ思い出だと思う。
永遠にあのままで、なんて言えない。当時はやっていたポップパンク勢も解散したり活動休止したり、あるいは音楽性を大きく変えたり。
それを揶揄して「ロックは終わった」みたいなこと言う人もいる。
でもそれは、自分たちの思い出を守ることを、誰かに押し付ける行為ではないだろうか。
年齢は重ねていくし、時代は変わる。でもお前らはそのままでいろ、なんてのは残酷じゃないか。
俺も変わった。時代も変わった。そして音楽だって同じように変わっていく。思い出はいつも優しいものだが、そこに甘えていてはいけない。
B-DASHは一旦終わる。でも俺は生きていくし、バンドのメンバーも先に進む。それでいいんだ。
でもあの日あの時、俺が自分の部屋でB-DASHを聞いて心躍らせていた時間、事実は永遠だ。多分ジジイになってもそうだろう。むしろ、心からそう思える存在があったことを幸せに思う。それで俺は先へ進むことが出来る。
ただただ、ありがとうB-DASH。
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うーんポエミーだ。
勢いに任せて書いてはみたが、何やら恥ずかしさもある。
まあ、ロックってそういうもんだよな、と自分に言い聞かせてみたり。