プロレスといえば入場、入場と言えばプロレス。
「入場だけで金が取れる」という表現があるように、プロレスというエンターテイメントにおいて入場は試合内容と同じぐらい大事な要素。
そしてその入場を盛り上げる楽曲。
一聴しただけでそのレスラーの姿形、表情まで浮かび上がってくるまさに代名詞。
そんな入場曲を取りあえず、ただただ紹介したい。
改めて聞くと「へ~こんな曲だったんだ」ってのもあるので。
せっかくなのでタイプ別に分けて紹介。
既存曲の流用
すでに存在している楽曲を入場曲に使っているパターン。
映画のサントラからってのも多い。
ミル・マスカラス / Sky high
日本における元祖プロレス入場曲。
元々ヒット曲だが、空中殺法を得意とするミル・マスカラスの入場曲として使われることでより人気が出たみたいな。
イントロが特徴的、というのもプロレス入場曲としてポイントが高い。
アブドーラ・ザ・ブッチャー / 吹けよ風、呼べよ嵐
プログレの代表格、ピンクフロイドの楽曲。
ブッチャーの不気味で凶悪なイメージと、ベースがブンブン鳴る楽曲の持つ不穏で暗い雰囲気が見事にマッチしている。
しかし、誰がこれ選んでたんだろうな。
凄い有名な曲か?って言われるとそうでもないだろうし。
三沢光晴 / スパルタンX
音源が見当たらなかったのでDVDで。
ベニー・ユキーデとの名勝負でも知られるジャッキー・チェン 主演のアクション映画。
同名の全く関係ないアクションゲームがファミコン初期にあったことも有名。
このテーマ曲にイントロを付けて入場に使っていたのが三沢光晴。
「みっさーわ!」というコールのしやすさも相まってめちゃめちゃ盛り上がる入場だった。
歌付きバージョンがあったりと、どれがオリジナルなのかはよく分からんかった。
獣神サンダーライガー / 怒りの獣神
言わずと知れた世界の獣神の入場曲。
アニメタイアップで産まれたレスラーで、これはそのアニメのOP曲。
これもやはりイントロが印象的で、そこから手拍子やコールがしやすいリズムで構成されており、プロレス入場曲として既に完成度が高い。
歌詞に「サンダーライガー」が登場する後期OPに変える案もあったそうだが、やはりイントロの差でこちらの方が印象に残る。
余談だが、ライガーがWWEに特別参戦した際に使われた曲が以下。
怒りの獣神に似ていつつ、微妙に違う曲になっているという絶妙な塩梅なので聞いてみてください。
CM Punk / Cult of Personality
ここからはWWE。
CMパンクも入場曲がいくつかあるが、やはり一番有名なのはこれだろう。
メンバー全員がアフリカ系という、当時としては相当珍しいメタルバンドLiving Colorの一曲。
タイトルを和訳すると「個人崇拝」
ムッソリーニとケネディを並列で並べて「俺様は崇拝される存在だ」と歌い上げる、個人崇拝を皮肉った結構過激な歌詞の曲。
インディからのたたき上げで、刺青バンバン入れたストレートエッジ、マイクでは団体批判もぶち上げるカリスマだったCMパンクの入場曲としてこれを選ぶってのも、かなりメッセージ性強いよな。
アントニオ猪木 / 炎のファイター
貼ったのはオリジナルのアリバージョンですが、日本で最も有名な入場曲の一つ。
改めて聞くとベースラインがめっちゃカッコいい。
元が映画のサントラってことになるのだが、「猪木!ボンバイエ!」のコールも確立されており、現代プロレス入場曲のルーツの一つと言えると思う。
オリジナル楽曲
藤波辰爾 / ドラゴンスープレックス
ホントにプロレス入場曲か?ってぐらい、言っちゃえばのんきな雰囲気が漂う一曲。
ジャンルで言うとフュージョンになるのかな?
ただ70年代80年代の日本プロレスはロック系よりもこういう入場曲が案外多い。
テンポ自体も今の入場曲と比べると遅め。
長州力 / パワーホール
巨匠・平沢進が制作を依頼されてなんとなく作ったみたいなエピソードで知られる長州力の入場曲。
延々同じメロディー、同じリズムの繰り返しなのだが、それがかえって印象に残りやすい。コールもしやすいし。
大音量のパワーホール(以下略
The Rock / Electrifying
言わずとしれたロック様の入場曲。
この曲に限らずだが、WWEの入場曲ってのは曲頭に決め台詞→イントロってパターンが多い。
加えて、テンポも日本のものと比べるとかなり遅め。
この辺は花道の構造とかそういうのも関係しているのだろうか。
"If you smell! What a Rock is cooking!"は日本語訳の難しい決め台詞としても有名。
Ston Cold Steve Austin / I won't Do what you tell me
この曲は正直イントロのガシャーン!でオチてるというか、完結してるような気もする。
乱入時も入場曲がかかるというWWEの性質上、イントロ一発で誰が来るか分かるようにしてるのかもね。
後はずっと同じリフの繰り返しというシンプルな曲。
中邑真輔 / The Rising Sun
公開時から凄まじい人気で、youtube等でもずば抜けた再生回数を記録している。
ヒールターンしたのに曲を合唱する客が絶えないため、日本語ラップが追加されたバージョンが作られたみたいな話もある。
それまで日本人の入場曲っていうと琴や尺八が使われた、どこかオリエンタルな雰囲気のある楽曲が多かったことを考えると、日本人レスラーの扱い自体が変わってきたことをここからも感じることが出来る。
鈴木みのる / 風になれ
「プロレスの王様」鈴木みのるの入場曲。
若手時代の鈴木が、大ファンだった中村あゆみに直談判をして制作してもらった曲。
日本では珍しい全編ボーカル入りの曲で、サビの「風になれ!」のフレーズと共に観客が大合唱、そしてリングインというのは今や様式美。
アメリカの観客もやってくれるってのが嬉しいね。
珍しいジャンルの入場曲
主にWWEなんですが、「これ入場曲なんだ?」っていう感じの楽曲が入場に使われることがある。
AJ Styles / Phenomenal
ボーカル入りとか、00年代以降だとニューメタルの入場曲は珍しくないんだけれどこの楽曲は全編ラップ。
ディストーションギターも鳴ってない。
ラップのスタイルとしては一世代ぐらい前のノリかなとは思うけど、日本感覚だとやっぱ珍しいチョイス。
Sasha Banks / Sky's the limit
ド直球のフィメールポップス。
レッスルマニアでは従兄弟であるスヌープドッグの生ラップで歌われたこともある。
No Way Jose / No Way Jose
EDM入場曲。
これに合わせてダンスしながら入場してくる姿は、見てるこっちも楽しくなる。
最近ホセ自身の出番は少ないけどもっと聞きたい一曲。
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挙げだしたらキリが無いのでこんくらいで。
WWEと新日本を比べるとやはり
・テンポ
・音楽ジャンル
に大きな違いが見られる。
そこには日米におけるプロレス自体の立ち位置、エンターテイメントの捉え方の違いみたいなもんもあるんだろう。
WWEでは大会テーマ曲にベビメタが使われたり、最近だとビリー・アイリッシュが使われてたりした。
アメフトにおけるハーフタイムショーほどじゃないが、やはりエンタメ同士が相互にクロスオーバーしているような印象を受ける。
日本でも大会テーマ曲を色んなアーティストが担当するってのがチラホラ見受けられるようになってきた。
そういう意味ではアメリカ化、が進んでいるのかもしれない。
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個人的に最近お気に入りのspotifyポッドキャスト番組"Pop Life Podcast"のパーソナリティ、田中宗一郎が「いつかWWE特集やりたい!」って呟いてたのに触発されて書いてみた。
トランプ政権にリンダ・マクマホンが加わってるとか、やっぱトータルで見ると白人文化なんじゃね?とか、マッチョイズムとナショナリズム(ハルク・ホーガンとReal American)とか、カルチャーとしての政治的立ち位置を考えると割と保守的な位置にありつつ。
それでもコフィ・キングストンがヘビー級王座戴冠とかPPVのメインが女子とか、そこには確実に変化が起こってることもまた事実。
日本のプロレスでも、戦後街頭テレビで人々が熱狂していたのが「白人のシャープ兄弟を空手チョップで叩きのめす力道山」っていう歴史がある。
そして、新日本プロレスも同系列に女子プロレス団体スターダムが加わったりとか、G1クライマックスを初めて外国人選手が獲得したと確実に変化が起こっている。
プロレスってどこか野蛮で低俗みたいな語られ方もされるんだけど、やっぱエンターテイメントとして観客の意識や時代性を色濃く表現し続けてきたものだと思うんだよな。
だから面白いし見るの辞められない。