「ブラックメタルはなんだか分かっているのか?」
Viceに掲載されたブラックメタルバンドAbbathのインタビュー。その中でこんなくだりがある。
ブラックメタルを始めたきっかけを教えてください。
King:ブラックメタルをやっているつもりはない。
Abbath:俺に任せろ。まずオマエに聞きたい。ブラックメタルが何か分かっているのか?
VENOMです。
Abbath:正解だ。そういうことだ。ブラックメタルはVENOMなんだ。ブラックメタルというものは、カテゴライズされたくないヤツの音楽のことだ。
流れに逆らうヤツのことだ。後ろ指差すようなヤツに「ファックオフ」を突きつける。宗教にも政治にも「ファック」を突きつける。それこそロックンロールであり、ブラックメタルだ。つまり自由ってことだ。それが分かれば自由になれる。分からなければ時間をかけろ。ブラックメタルのアティチュードなんてものは、元から存在していたわけじゃない。
VENOMだって、いろんなものが重なって生まれた。MOTÖRHEAD、SEX PISTOLS、アリス・クーパー、デヴィッド・ボウイもな。地獄から生えた木なんだ。
「何だ?」って聞かれて「Venom」と即答するインタビュアーも相当凄いと思うけど、それに対するAbbathの回答が痛快だ。
流れに逆らうと聞くと、単なる天邪鬼と捉えられそうだけれども、実際いるわけだよな流れに乗れないやつって。
俺だって全てにおいて乗れているわけじゃない。
そこで「逆らうこと」を体現してくれるような存在にはとても勇気づけられる。
もちろん、なんでもかんても逆らうわけでは無い。
インタビュー全体を見れば、Abbathは反抗的な姿勢を持ちつつも冷静に現代を見据える視点を持っていることが分かる。
どこかのフェスでベビーメタルと写真撮って話題になっていた。
別に流行なら何でも嫌いとかそういうわけではない。
キチンと「NO」あるいは「ファックオフ」と言うべきものに言うということだ。
インタビューの最後、インタビュアーの息子がAbbathをみて「この人は悪魔なの?宇宙人なの?オバケなの?」と話したというエピソードに対する彼の返答がこちら。
Abbath:じゃ、その4歳の息子に言ってくれ。「好きなように思ってくれ」とな。真実はひとつ。
オレたちはここにいて、するべきことをやっている。音楽も言葉も自由にやっている。あとはみんなが好きなように解釈してくれればいいんだ。もちろんオーディエンスから怒りを買うこともある。だがそれも自由なんだ。ロックンロール、オレが極めたいのはそれだけだ。
俺が信じている宗教があるとすれば、それはロックンロールだ。すべて自分で決めろ。自由だ。
なんてイかした人らなんだろうか。
ただ俺も、良いものに「ファックオフ」なんて言うつもりはないし、自分の好みじゃないだけなものを否定するつもりはない(昔はやってた)。
ただいつか、しっかりと「NO」言うべき時が来ると思うんだよな。
それが何かは今のところわからない。でも多分あると思う。
だからその時、ちゃんと言うための言葉と、決意をしっかり持つべきだな。
議論とかじゃない否定、拒否ってのはそのぐらい重い行為だと思っている。
突っ込んだやつが悪いと思う
事件が事件なんでアレですけど、件の強姦事件でその被害者という女性が会見を開いたという話。
そこにぶら下がってるコメントも地獄みたいで見てられない。
「そんな露出の多い恰好で…」
「夜中に二人で酩酊するほど酒飲むやつが悪い」
「女性の脇が甘かった」
「美人局だろ…」
で、被害者が何やらどっかの政党と絡んでるんじゃないかみたいな陰謀論的な噂もあったりして。
ただ、思うんだけれども「露出が多いから」「酒飲み過ぎたから」あるいは「美人局」だから「ヤッていい」って話じゃねえと思うんだよな。
結局突っ込んだ男に最終的に責任があると思うんだ、どんなケースでも。
勃ったから、股開かれたから入れた。
で、入れたのはお前じゃん。
誘われようと、騙されようとさ。
少なくとも「ヤッたかヤッてないか」で言えばもうヤッたことになってるわけじゃん。
それで女性叩くのは筋違いでしょう。
「誘うような恰好する方が悪い」って、誘われるような恰好してたら襲うのかお前は。「ムカつく顔してたから殴る」ぐらい滅茶苦茶な話だぞ。
それにどんなケースにしろ、「私はこの人に犯されました」なんて顔出して言うのってすごい勇気がいることだよ。
どんなゲスな週刊誌の記事だって性体験系は顔隠すじゃん。
なぜ自分はこの女性に対して拳を振り上げようと思ったか、一旦振り返るべきだと思うよマジで。
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(追記)
ただ「共謀罪が~」云々っていう言及は余計だったと思うわ。
あれで変に政治的ベクトルが付いてしまって話がややこしくなった感はある。
語ること、が損にならないように
好きなものを語るのは楽しい。少なくとも語ってる当事者は。
聞いてる方が楽しいかどうかは別だ。
こないだ終わった「有田と週刊プロレスと」は「語ってるのを見るのが楽しい番組」だった。
語るやつの話し方が上手いし、聞く側も興味を持って熱心に聞いてくれる。
それは理想的な状況だ。前にも書いたかもしれんけど。
でも、そういう環境ばかりではないのが現実。
実際、そんなに人の話聞きたいやつばっかじゃないし、聞きたい話というのもあくまで「俺の聞きたい話」というか「俺にとって都合のいい話」だったりする。
その場が「面白かった」空間なら話なんかなんでもいい、ってのもあるだろう。
アメトーークでたまにそういう回あるよね。芸人いじる方に夢中になってテーマどうでもよくなる回。あんな感じ。
そういうとこでいくら語っても、多分無駄というか損なんだろうな。
話し上手、聞き上手の芸人さん同士でそうなんだから、一般人の俺らの間ではさらに難しいわけです。
そうなると、俺らは「聞いてくれる人」を求めてネットをさまよう。2ちゃんねるか、ツイッターかFacebookか。同じ趣味を持つ奴で固まって語り合う。
でもそれも、いつしか目的がすり替わってくる。
「語る」ことが「守る」ことになってくる。
聞いてくれないやつは敵だみたいな。
最悪だな。
だから、話す術を持つこと。話を聞いてもらえるような信頼を得ること。
そして何より話すに足る考えを持つことが大切だなと思う。
話す相手がいないなら、探すより作った方がいいと俺は思う。
件のランキングの話
「みんなで投票してランキング決めましょう!」みたいな企画をチラホラ見かける。
こないだはアニメでやってたし、少し前はネット番組の中で「上手い歌手」ってのをやってた。
それぞれそれなりに炎上というか、納得いかない人が出たことで話題になってた。
それについて「最近はこうなのかな」とか話してたら後輩に「昔からそういう人はいたんじゃないですか?今の人はってのは違うんじゃないですか」って指摘があって、いやそれはその通りだなと。
「ランキングは公平なフリをした意味のない行為」って厳しい指摘もあり。
文化芸術はスポーツなどのように序列をつける意味はない。売り上げランキングってのはあくまで商業的な意味合いだし。
文化の相対的な位置とかを考えるとき、それはもっと立体的だ。
ランキングっていう形で一直線に無理やり並べるのは、一見分かりやすいのと、まあ一喜一憂するのが楽しいからだろう。
まあ乱暴な語り口で若い世代を腐したような言い方になってたんだろうな。反省。
ファンとファン
職場にプロレス好きな人がいて、よく観戦に誘ってもらうようになった。
ありがたいことだ。
ただ、そこで気になることがあった。
その同僚は特定のプロレス団体だけが好きで、他のプロレス団体のことは知らないし興味もない。
技の名前も知らないし、入場曲のタイトルも知らない。
試合後、別の人と技がどうとか他の団体との絡みがどうとか話してたら、
「なんでそんなに興味持てるの?」
と普通に疑問を抱かれた。
それに対する答えを俺は持ってない。
もちろん、同僚は楽しんでる。声上げて応援してるし、月に何度も現場に行く立派なファンだろう。
知識があるから偉いとか、何回現場に行ったから偉いとか、いくら使ったから偉いとかそういうのでファンかどうかは決められるべきではない。
俺がただ欲しいのはそれぞれが平和に同居できる環境だ。
ひたすら物事を追っかけるやつ、現場に通うやつ、物を買いまくるやつ、それらが個別に存在するのではなく同じ「ファン」として何か共有できれば。
互いにああしろこうしろ。あれは嫌だこれは嫌だ、って敬遠しあうのって悲しいし。
そう思いつつ、俺は同僚との、ファンとしての距離感を測りかねている。
「これは引かれるんじゃねえか…」みたいな。
一歩引いてみれば「楽しんでる人」には違いないと思うんだよなお互い。
ただ、もう一歩近づきたいなあ…。多分俺が見えなくなってるもんとかあると思うし。