家で寝てるだけなのに疲れるようになっちゃったよ。
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2019年に公開されたゲームのCS移植版です。
なんとなく新しいゲームを探していた中、パッと見たPVの雰囲気にやられて調べもせず購入。
タイトルは「クリア感想」となっていますが、何をもって「クリア」とするのかが難しいゲームではあるので、「何度かエンディングに到達した」という意味合いです。
以下概要と感想。
概観
記憶を失った主人公を操作し、寂れた港町で巻き起こった殺人事件に迫っていくアドベンチャータイプのRPG。
独特のルックと、かなり細部まで作り込まれた世界観、そしてなんといっても圧倒的な文章の量。
「人を選ぶ」というのはまさにこのこと。
とっつきにくく、紹介も難しい。でもドハマりしてしまう唯一無二な魅力にあふれたゲームだった。
「余計なもの」を楽しむゲーム
まず最初に基礎ステータスの設定が行われる。
頭脳や身体能力などに数値を割り振る。
そしてその下にある各スキル、頭脳であれば知識量をつかさどる「百科事典」、身体能力であれば手先の器用さをつかさどる「手さばき」などに数値を更にセット。
こうしてキャラメイクを行い、物語に入っていく。
これらのスキルは物語の各所で影響を与えてくる。
「手さばき」が高ければ地図をこっそり本屋でくすねることも出来る。
「腕力(に準ずるスキル)」が高ければ無理やりカギのかかったドアを開けることが出来る。
「暗示」が高ければ、口先で相手を操ることが出来る。
これら、どのスキルをどのように使うかによって物語は大きく変化していく。
この際にTRPGのようなダイスを使った成否判定が行われる。なので、能力が低くてもダイス次第で突破出来てしまうのだが、これは少しゲーム的に気になるポイントだった。
そして、これらのスキルは主人公の「人格」でもある、というのが最大の特徴。
ひたすら文章を読んでいくゲームなのだが、その合間合間でこれらのスキルが脳内で好き勝手喋りだす。
相手の言葉を聞いて「百科事典」が知識を披露し、「腕力」が力ずくでの解決を提示し、酒とドラッグに溺れることを求める人格が大騒ぎを始める。
これらの脳内会話は攻略に関係あるものもあるが、その多くはぶっちゃけ余談も余談である。
このゲームの魅力はこの「余計」な部分に詰まっている。
物語は寂れた港町で展開され、ホテル周辺、港工場、旧市場、この3エリアでほぼ完結する。
しかし、その背景には複数の国家とその政治状況が複雑に絡み合っており、それらの断片は登場人物の会話から少しずつ語られる。
ハッキリ「共産主義」というワードも出てくるが、基本的に架空の国家での話であるが故、全体像を把握するのはかなり困難だ。
で、その世界観がゲームに必要か?と言われるとこれもぶっちゃけそんなに関係無い。
選択肢も多数存在し、主人公がどのような人物なのかを他者に示す場面が現れる。
資本主義者なのか共産主義者なのか、フェミニストなのか男性至上主義者なのか、ヤク中なのか真面目な刑事なのか。
じゃあそれを示したことで何が変わるのか、というとそんなに変わらない。
膨大な文章の大半が、事件とは関係が無い。
これが最大の特徴だと思う。
この文章を楽しめるかどうか、これに尽きる。
「いいから早く真相を教えろよ」みたいな人には全くもって向いていない。
和訳独特の、若干分かりにくい日本語の渦に飲まれ、垣間見える社会の姿を想像し、主人公の背景を少しずつ感じ、演じる。
自分の脳内と「トーク」しながら進める「RPG」、それがDisco Elysiumだった。
主題となる事件、そのものの真相やトリックのようなものは別段複雑では無い。
大事なのはそこに関わった人々が何を感じ、何を考えているのか、それを会話の中から読み解くことだろう。
単なる「事実」だけを追うことにこのゲームは重点を置いていない。
街のNPC一人一人の人生、思想、思考。それらを追うことがこのゲームの主題だ。
気になるポイント
まず単純にフリーズやバグ落ちがまだ頻繁にあるという点。
オートセーブ機能もあるが、頻度があまり高くないため、こまめに手動セーブをしておかないと数時間の操作がパーみたいなこともあるので注意。
前段でも述べたが、スキルの成否判定の部分。
スキルが高ければ成功確率は上がるものの、100%にはならない。逆に低くても0%にはならない。
事前にセーブしてリセット&ロードを繰り返せばどんな能力値でも突破出来てしまう。
これは若干気になるポイントだった。
失敗は失敗として進めればいいのだが、じゃあ何のために事前に能力値を設定したのかという気になってしまう。
また、時間経過は「新しい文章を読む」ことで行われる。
一通り回って今日はもうすることが無いのに、新しい文章が見つけられずにあっちこっち走り回る、みたいな不毛な時間が発生しやすいのはちょっとストレスだった。
感想
買って損なし。
一気に何周もしたくなる一方、その後は少し時間を置きたくなる。
またやりたくなる中毒的な魅力があるゲームだった。
こういったゲームがPCインディーから出てきてCSに現れるという現象は自分のようなライトユーザーにとってはとても有難いこと。
steamで片っ端からやるぜ!みたいな資金力も英語力も無いもんで。