吐き捨て系日記

もう30になっちゃう男が考えを整理するためにブツクサ綴る、ほんとにただの日記です。

なぜ『コナン』は『アベンジャーズ』より強いのか?

アベンジャーズ / エンドゲーム』が世界的な大ヒットを記録している。
タイタニックすら抜いて、世界興行収入ランキングの二位につけたとか。


俺も見たがやっぱ面白かったし、何より「10年見てきてよかったな」と思わせてくれる映画だった。
それはそれとして、今回は別の話題。


前作『インフィニティウォー』の頃からよく話題になっていたのが、「世界各国ではアベンジャーズが一位なのに日本だけコナンが一位だった」みたいな話。

www.oricon.co.jp


これに対して「日本おかしいだろ」とか、「日本のコンテンツが強いのは良いことじゃないか」みたいな議論というか言い争いがあった。
そして今回の『エンドゲーム』も、日本では破格のヒットをしているもののやっぱコナン強いな、みたいな感じになっている。

news.livedoor.com


実際には、公開時期とか計算方法とかによる部分も大きそうで、単純比較は出来なさそうだけど結局どっちが多いんだろうな。
まあそこは細かいとこかもしれんが。

で、それらに関する記事でまた論争が起きてるらしい。


www.sbbit.jp


音楽ライターの宇野惟正氏へのインタビュー記事。
なぜアメコミ映画は当たらないのか?という分析。

そして、これに対するカウンター記事。

 

cinemania.hatenadiary.jp


お前の分析は間違ってる!ってな感じで批判している。
特に宇野記事の「オタクからの脱却を目指すアメコミ」の部分が気に入らなかったらしい。


両方読んで色々思うところはあるのだけれど、俺が気になった点は別の部分。
「コナンの分析、誰もしてなくね?」ってこと。

アメコミがー、日本の文化がーって話も大事だと思うし、世界的コンテンツが日本で注目されないことに対する危機感みたいなのも分かるっちゃ分かる。
でもその前に、まずコナンが何でこんなにヒットしてんの?って話もっとした方がいいと思うんですよね。


というのも、コナンの映画自体は俺が小学生だった頃からやってたわけですが、その頃の感覚からすると昨今の大ヒットに違和感というか、「ドラえもんポケモンの方が売れてなかったか?」というのがある。

なので今回は「なぜ日本でアベンジャーズがあんまり伸びないのか?」じゃなくて、「なぜコナンが強いのか?」という視点で、客観的な数字から振り返ってみることにしました。

前提として、俺はコナンをそこまで熱心に追っかけてる方じゃないというのは述べておきます。

『コナン映画』のヒットはいつから?

コナンのテレビアニメシリーズが始まったのは漫画の連載開始から2年後の1996年。
劇場版は1997年の『時計仕掛けの摩天楼』からスタートし、一年に一本ペースで公開されている。

第一作、『時計仕掛けの摩天楼』は興行収入でいうと11億円。
この年『タイタニック』が世界的な大ヒットを記録し、日本でも年間一位を記録している。
また、『もののけ姫』が193億円の大ヒットで国内映画として一位、長寿アニメシリーズとしてはドラえもんの『ねじ巻き都市冒険記』が配給収入で20億ぐらい。
コナンは年間ベスト10にも入らないぐらいだった。
翌年にはポケモンの映画シリーズもスタートする。


そこから10年以上、コナンの映画は全体ではもちろん、アニメというジャンルに限っても、『ドラえもん』『ポケモン』『クレヨンしんちゃん』そして『スタジオジブリ』『エヴァ』という強豪達と抜きつ抜かれつといった感じで一定の興行収入は記録するものの、ダントツのヒットには至っていない。
ランキング自体は国内3位とかに何度もなっているが、そもそも国内映画が興行収入あんまり伸びてない中でだったりする。
2000年代後半には更なる強豪、妖怪ウォッチが登場している。


※参考:過去の興行収入上位作品 日本映画製作者連盟

www.eiren.org


潮目が大きく変わったのは2016年。
実写では『シン・ゴジラ』、アニメ映画では『君の名は』が大ヒットした年だが、妖怪ウォッチポケモンドラえもんなどの人気国内アニメシリーズを抑えて第三位に『純黒の悪夢』がランクインしている。

そして翌年2017年には、その他邦画をも抑えて国内の一位を獲得している。

数字の推移で見ると、それまで30~35億前後で推移していた興行収入が2014年に42億、2016年には63億と急激に増えている。
邦画全体の興行収入が徐々に伸びてきてはいる時期なのだが、その中でも突出して興行収入が増えていることがわかる。

そして2017年は68億、2018年に公開された『ゼロの執行人』はなんと91億という数字を記録している。
2014年の『異次元の狙撃手』が興行収入42億だったことを考えると、わずか4年で倍以上伸びたことになる。

ちなみに『ゼロの執行人』と同月に公開された『アベンジャーズ / インフィニティウォー』は37億、日本ではダブルスコア以上の差がついていた。

なぜ急激にコナンはヒットしたのか?

まとめてみよう。

公開から2013年まで、多少の上下はあるものの名探偵コナンはおよそ30億前後の興行収入で推移してきた。
それが2014年に40億を突破すると、そこから年毎に1.5倍近い伸びを起こして2018年には90億を突破した。

これはその他アニメ映画シリーズと比べても明らかに異質だ。
妖怪ウォッチは2015年に国内一位を記録したもののそこからは30億前後に安定、ポケモンもシリーズ開始当初は爆発的なヒットをしたがやはり20億後半から30億で推移している。ドラえもんも同様、クレヨンしんちゃんは実はそこからワンランク下がって20億に届くか届かないかぐらい。
コナンは確かに長いシリーズだが、ドラえもんクレヨンしんちゃんはもっと長い。
人気っていう意味で言えば世界的な顧客を持つポケモンもある。
でも今、日本で強いのはコナンなのだ。


つまり、「シリーズが長いから」とか「コンテンツとして愛されてるから」とか、「オタクカルチャーが」という分析だけでは片づけられない何かがこの数年『コナン』にはあったと考えるべきだろう。

本編とのキャラクター連動

名探偵コナンといえば毎回各地で起こる事件にコナン達が巻き込まれ、それを解決していく数話完結ストーリーが基本。
被害者や犯人は基本的にゲスト、仮にメインキャラが容疑者になってもそれは冤罪であることがほとんどだ。
そして設定上は、永遠に四季を繰り返すいわゆる「サザエさん時空」と異なり作品内で明確な時間経過があるらしい。
にしては人死に過ぎだろ、ってのは野暮なツッコミ。


大事なのは、日々の事件解決とは別のメインストーリーラインがあるということ。
「オレは高校生探偵、工藤新一」からはじまる導入部で説明されている、「黒の組織」という謎の犯罪者集団との争いだ。
各地で事件を解決しつつも、合間合間で黒の組織や彼らを追うFBIや公安に絡んだストーリーが少しづつ進んできていた。

劇場版でも『世紀末へのカウントダウン』や『漆黒の追跡者』など黒の組織が犯人となる作品自体はあった。


しかし、いくつかのキャラクターが新たに登場したことにより、そのストーリーがより核心に迫るようになった。
代表的なところで言えば、英語教師ジョディ・スターリングや赤井秀一、安室透といったキャラクターがその役割を担っている。
前二人が登場するようになったのは『バトルゲームの罠』そして『謎めいた乗客』という話から。
それぞれ単行本で言えば27巻、アニメで言えば2001年の2月から4月にかけて。

安室が登場するようになったのは75巻、アニメでは2012年に放送された話から。

そこから長い年月をかけて、日常の事件解決とは別に彼らの正体が明かされていくストーリーが展開していく。

また、「安室=アムロ」「赤井=赤い」といった語呂合わせから、初代ガンダムに出演していた古谷徹池田秀一というベテラン声優が演じたこともあり、ファンの間でも大変人気の高いキャラクターになっている。


そんな彼らが初めて映画に登場したのが2014年に公開された『異次元の狙撃手』だ。
この年はこれとは別に『名探偵コナンvsルパン三世』も公開されている。

この作品ではジョディ、沖矢昴、赤井、そして黒の組織といったテレビ版でもおなじみのキャラクターが重要な役割を担っていた。
そして突筆すべきなのは、彼らの新しいストーリーが漫画やアニメに先駆けて展開されたということだ。詳しくはネタバレになるので割愛。
そこに前述したようなキャラ人気、そしてルパンとの共演映画効果などによって40億を超えるヒットが生まれたと考えるのが自然だろう。


次作『業火の向日葵』は、メインストーリーに黒の組織関連のキャラは登場していない。
しかし、本編の人気キャラクターである怪盗キッドが過去作とは違い敵になるというストーリーや派手なアクションは好評を得た。
そして、恒例となっているエンドクレジット後の予告で、次回作が黒の組織がメインとなるストーリーだということが明かされた。


それが2016年の『純黒の悪夢』だ。
この作品では赤井、安室、ジョディが中心となり、黒の組織と対峙するストーリーが描かれている。

次作、服部平次がメインに絡む『から紅の恋歌』までの伸び率がそれほど大きくないことから見ても、「赤井、安室が絡むと急激に伸びる」ことが分かる。
と同時に、「黒の組織が絡んでいなくても伸びている」という事実から、『純黒の悪夢』のヒットによって「コナンの映画を見る固定客を確保した」ことも同時に考えられる。


そして2018年の『ゼロの執行人』だ。
これはポスターに大々的に安室が描かれている通り、彼がコナンの敵として立ちはだかるストーリーになっている。
「安室透の女になった」というワードがSNSで飛び交うなど、安室の魅力が遺憾なく発揮された本作。
「安室を100億の男にする!」を合言葉にリピーターが続出したことも話題になった。
100億には届かなかったものの、90億を超える興行収入によって国内作品でもトップクラスの結果を残した。


つまり、それ以前の作品のような一回きりのスペシャルストーリーではなく、本編のキャラクターを様々登場させて、キャラクターを掘り下げたり、メインストーリーを先へ進めるような映画に切り替わったこと、それがコナン映画が急激に興行収入を伸ばした要因と言えるのではないだろうかと。


ここから見えてくるものは何なのか、それは翻って「アベンジャーズ」のヒットと重なる部分もあると思われる。

「長く見ていく」ということ

冒頭で『アベンジャーズ / エンドゲーム』について「長く見てきてよかった」と感想を述べた。
2008年のアイアンマンから始まり、20作をこえる映画で紡いできたストーリーが結実する感動がそこにはあった。


そこで、今まで述べてきたコナンの分析を省みると、今まさにコナンのファンたちはこの「長く紡いできたストーリーが結実する」感動へ向かっているんじゃないか、そう思えてきた。


怪盗キッド、安室透、赤井秀一黒の組織、そして2019年の映画で中心に据えられた京極真。
本編に登場した様々なキャラが、それぞれがメインになる映画で新たな活躍、ストーリーを紡いでいく。
言ってみれば今まさに「コナン・ユニバース」が進行している真っ最中なんじゃないか。
振り返ってみれば、そもそも怪盗キッド青山剛昌の別の連載作品『まじっく快斗』の主人公だし、細かいとこで言えば単なるモブ刑事に過ぎなかったキャラが担当声優からとった「高木」という名前を与えられ、彼が主役のエピソードが展開されるようになるなどクロスオーバーやメディアミックス、逆輸入みたいなものが盛んなのがコナンだった。


昨年、漫画本編では黒の組織の親玉の名前が明かされた。
それがいったい誰なのか、今はどこにいるのかまではまだ明かされていない。

が、20年前に比べればストーリーが核心に迫っていることは明らかだ。


そうなったら、そりゃ映画館行くよなあ。
昔コナンを見てた世代が、小学生の頃に見てた作品の大きな謎が今になって明かされる、となれば大人になって長らく離れてたとしても見に行こうと思うだろう。


実際アクションも派手で謎解きもあり、娯楽映画としてクオリティが安定していることもある。
ディテールにも細かく気が配られており、登場人物に合わせて酒や煙草の好み、乗っている車の車種などがキャラのイメージに合わせてそれぞれ設定されている。


アベンジャーズと比較する際に単なる「子供向け、オタク向けのアニメ映画」として語っちゃうと見えない部分が昨今のコナン映画にはあると思う。
少年が主役だから、大人が主役だからてのとも少し違うんだよな。
オタクカルチャーというか、オタク的行動の影響は多分にあるとは思うけど(リピート視聴文化、購買意欲の高さとか)。


ただやっぱり、単行本96巻で25年、テレビで23年、映画で22年に渡って続く中でちょっとずつ進んできたストーリーが今大きく動いている。
かつてコナンを見ていた子供たちが大人になり、再びその行方に注目している。
そして今の子供たちも、今まで熱心に支えてきたコナンファンたちも。

それがポケモンドラえもんでなく「コナンが」アベンジャーズに勝った理由じゃないかなあって。


ちなみに来年の映画は赤井秀一がメインになることが予告で明かされている。
これもヒットしそうだな。