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吐き捨て系日記

とある20代男が考えを整理するためにブツクサ綴る、ほんとにただの日記です。

『装甲騎兵ボトムズ』の話

アニメ

一番好きなアニメは何か?と聞かれたら恐らくまずこれが思い浮かぶ。

 

装甲騎兵ボトムズ DVD-BOXI

装甲騎兵ボトムズ DVD-BOXI

 

 最初のテレビシリーズが1983年に放送されてから、最近まで続編がリリースされ続けていた。これはガンダムマクロスに匹敵するぐらいの長さだ。ただ、両者と比べると圧倒的に知名度が低い。

人気が無いわけではないが、世の中を巻き込んだムーブメントになるほどの広がりは持っていない。それでも、続編がリリースされ続け、愛され続けるのはそれだけ、ボトムズにしかない魅力があることの証明ともいえる。

 

というわけで、ボトムズの魅力を簡潔に述べておく。これで興味を持ってもらえたら幸いだ。

 

1.ATという発明

ガンダムのMS、マクロスバルキリーにあたるものがAT(アーマードトルーパー)だ。見てもらえばわかるが、非常に地味な見た目をしている。

武骨で、顔が無い。ターレット式のカメラにむき出しの銃器。ビームは撃たない。変形もしない。

徹底的にヒロイックさを排除し、機能を追求したデザインだ。そこには「機能美」がある。

 

足の裏のローラーダッシュ、急速旋回のためのターンピック、乗り降りのための降着機能、パイルバンカー、アームパンチ。

 

様々なギミックに溢れている。単純に強い弱いではない。こんな機能がある、そういう使い方がある、そういった魅力だ。

だからこそ乗っている人が大事になる。

「MSの性能の差が戦力の決定的差でないことを教えてやる!」と言ったのはシャアだが、多くの場合その性能差で決着がつくことが多い。

ボトムズの監督、高橋良輔氏がボトムズの前に作った「太陽の牙ダグラム」では、主人公機ダグラムが何より圧倒的に高性能だった。その分、いくら強くても戦況、クーデターの成功には至らないというのが面白いのだが、ボトムズではその逆だ。

ATは非常に脆いし、大量に現れる。しかし、その一機によって戦局が動く。その差は人の差だ。そこがボトムズの魅力の一つだと思う。人を無視してATは語れないのだ。

 

装甲騎兵ボトムズ 1/20 スコープドッグ(ペールゼン・ファイルズ版)

装甲騎兵ボトムズ 1/20 スコープドッグ(ペールゼン・ファイルズ版)

 

 高橋監督作品には、ゴーグル型のディスプレイ(いわゆるスカウター)やパイルバンカー、ガリアンソード(蛇腹状に分かれて鞭のように扱える剣)など、その後のスタンダードとなるような新しい要素が多い。これも凄いことだ。

 

2.キリコの物語

ボトムズの続編は今までずっと作られ続けてきたが、そのうち8割近くの主人公は同じ、たった一人の男だ。

 

キリコ・キュービィー

 

不愛想で、無表情。感情をほとんど表に出さない。いつも同じ耐圧服を着ている。戦闘では無類の強さを誇るものの、無敵ではない。割と何度もやられている。

その度に復活し、敵を打ち倒す。しかし、キリコは何も得ることがない。

そんなキャラクターだ。

 

彼には、一つ重要な設定がある。「異能生存体」

詳しくは省くが、要するに「生命に危機が迫ると、何か別の力によってそれが取り除かれ、生き続ける」ということだ。

銃で撃たれそうになれば銃は不発に終わり、強大な敵の弱点を偶然跳弾で狙撃する。星が爆発しても、全身の骨が折れても生き残る。

いわゆる主人公補正そのものを逆手に取った設定だ。この力にキリコは振り回され続ける。力を求める者から常に狙われ、どんな戦場でも自分だけ生き残り孤独になる。

戦いの中でしか生きられず、他人を避け続ける。テレビシリーズ以前の彼はそんな男だった。

テレビシリーズの中で、彼は運命の女性に出会う。フィアナと呼ばれるその女性は、キリコと近い能力を持っていた。パーフェクトソルジャー。

キリコのような存在を人為的に作り出そうとした、人造人間だ。不完全であるがゆえ、ヂヂリウムという鉱石のシャワーを浴びなければ生命が保てない。

そんなフィアナにキリコは執着する。フィアナもまた、キリコに惹かれていく。

 

OVAの続編でも、キリコはフィアナを追い続ける。

それがキリコの魅力だ。目的は一つ、そのために生き続ける。世界や時代が変わっても同じ目的のためにひたすら生きようとする。

OVA『野望のルーツ』のラストでキリコは自身の運命を狂わせた一人、ペールゼン大佐にこう言ってのける「たとえ神にだって、俺は従わない。」

事実、この後本当に「神」を殺すのだが。正義のためとか、誰かのためではない、自分の目的のために生きる。フィアナのために身を捧げるといった奉仕の姿ではない。新しい作品になるにつれ仲間も増える、敵も増える。でも目的は変わらない。

 

いつまで経ってもブレない。80年代から00年代になってもキリコはキリコだった。それがこの男の魅力だ。

 

 

3.言葉の力

ボトムズに登場するキャラはあまり多くを語らない。戦争について、正義について、生命について、そういった話をするキャラはほとんどいない。

みんな目の前の生に必死なのだ。そこで紡がれる言葉はやはり力強い。

 

 

リーマン「死なぬ筈があるか!死なぬ筈が...」「必ず死ぬ筈だ。...人間ならばッ!!」

 

テイタニア「キリコ、私はお前の生き方を、認めん!」

 

バイマン「こいつの肩は赤く塗らねぇのか?」

グレゴルー「貴様……塗りたいのか!?」

 

シャッコ「あんたは人間のクズだ!」
 

 

ストレートに、その思いを伝えるキャラが多い。キリコも、独白で自身の思いを綴る。そうした中で、さらに彩を加えるのが次回予告だ。これも毎回監督が考えていたらしい。

 

第15話 疑惑

 

回る弾倉、起きる撃鉄。
こわばった指がトリッガーを引く。
撃針が、空の薬室を撃ち、虚しい音を立てたとき、
皮肉にも、生の充足が魂を震わせ肉体に溢れる。
ロシアンルーレット。
この、危険な遊戯が、これこそがこの世に似合うのか。

次回「掃討」。
弾倉が回れば、リスクが上がる。

 

第23話 錯綜

 

嵐が吹かねば、太陽が輝かぬとするなら、
大地を走る無謀な風となろう。
戦いの果てにしか安らぎは来ないものなら、
己の血のたぎりに身を任せよう。
それぞれの運命を担い男たちが昂然と顔を上げる。

次回「横断」。
放たれた矢は、標的を射るか。
地に落ちるか。

 

第50話 乱雲

 

死にかけた神が呼んでいる。
全宇宙を敵にしても、我が下に来るべし。
我は与えん、無限なる力を。
我は伝えん、3000年の愉悦を。
神なる者の壮大な誘惑。
人たる者の壮絶なる決意。
いまクエントに、最後の戦いが始まる。

次回「修羅」。
全てを得るか、地獄に落ちるか。

 

 非常に強い言葉が並ぶ。銀河万丈氏のナレーションも相まってとても印象に残る。よく見れば、その話それぞれに即した内容になっている。

こうした言語センス、それもやはりボトムズの魅力だ。

 

余談だが、高橋監督の作品はどれも次回予告にとても力が入れられている。

Not even justice, I want to get to the truth と言ってのけるダグラムや、短歌を毎回詠むガサラキ。予告というよりは総括に近いのだが、俺はこれが好きだ。

 

 

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以上、俺が思うボトムズの魅力を簡単に書いた。やっぱり古い作品ゆえか、粗い部分もあるし、テレビシリーズは一年物なのでダレる部分が無くはない。

しかしそれを置いても、魅力的な作品であることは間違いないと思うので、ぜひ一度見てみることをお勧めする。