「生意気」というものに対して実は長いこと憧れがある。
というのも、俺はとことんそういうものを避けて生きてきたという自負があるからだ。
まあ生意気ってのは決して褒められるニュアンスの言葉ではない。
要は身分不相応な振る舞いに対して与えられる言葉だ。
ただ、よく考えてみればこれはあくまで上から与えられる言葉だ。
年齢的になのか、社会的地位的になのか、それは状況によって変わるが、
「上」のやつから見て「下」だと思われるやつの行為がその身の丈に合っていないという評価。
なんだけれども、俺は、あるいは俺と同じようなやつはそれを自分から判断していく。
「こんなことは俺の身の丈に合っていない、生意気な行為なのではないか」と。
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なんでこんなこと思ったかというと、例のジャズ少年。
名前を出すとなんかアレなので控える。
俺が観測できる範囲では、ライブで好き勝手やってしまった少年がビンタされたって事だったわけだが。
で、「ジャズとは本来…」みたいなのはそもそも結論出ない話だと思うので一旦置いておく。
結局、音楽的に本人が着地させられなかったわけなので、あれは失敗で、怒られるのはまあ分かる。
で、体罰はどうなんだっていうのはまた難しい話なので俺はこの話題からも逃げる。
俺が気になったのは、そういう「生意気な奴」の存在。
結果、あいつは失敗したしビンタされたわけだけれども、ああやって自分を表現しようと仕掛けられる、そういう精神は凄いと思う。
ナルシシズムだとか中二病だとか、若さゆえの無知と言って片づけることも出来るんだけれども、それじゃああまりにも冷たいように思える。
あいつはあいつなりにやりたいことがあって、敢えてリスクがあるあの場面でそれを仕掛けたわけだ。
俺は当事者じゃないから、直接「嫌な思いをした!」なんて声高には言わんが、実際時間取られてライブ滅茶苦茶にされた他のプレイヤーとか、金払って見に来た客はまあ嫌な思いしただろうし。
一応音楽という枠の中の出来事とはいえ、勝手無法をやることでいろんなものが壊れたし、その責任をあいつは音楽の中で片づけられなかった。
(ていうかそもそも、アドリブ仕掛けるなら相手が違ったんじゃねえかという気もするが。)
ただ、それでもやりたいことがあったんだろう。
やって、失敗して、怒られた。ここに口挟むことはしない。
ただ、「やった」ということに関して俺はある種尊敬する部分がある。
俺には出来なかったから。
「生意気」になれなかった少年時代があったから。
だから、ロックとかそういう音楽に傾倒していったのかもしれない。
俺が出来ない「生意気」をやってくれるから。
全員が身分相応な振る舞いをして回っていく、それはまあつまらんだろう。
そこをブレイクスルーするのは結局生意気な奴だ。
必要なんだとは思う。
もちろん、それを「てめえ生意気だな」と叩き潰すオッサンも必要。
要は生意気やっても、結果が出たら誰も何も文句言わんと思うのよ。
そこで体罰がどうとか、そういうのは俺にとっては、また別の話。
俺は体罰嫌いだけどね。
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もうこの歳になると「生意気」ってことすら中々やれなくなってくる。
自分の社会的地位ってのが嫌と言うほど身に染みる。
それを突破して上に噛みつくってことのリスクもデカくなる。
だから、俺には出来ない、と決めつけたくなる部分もあり、そうしたくない部分もあり。
なんやかんや言うたけども、俺はあの少年の生意気で身勝手な姿にふと思うところがあったという話でした。
まあ迷惑かけたならそのツケを払えばいいわけで、それでチャンチャンになればいいよな。
若い奴が調子こいて失敗して、そこから立ち上がるってのもよくある話。
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「ジャズとは逸脱するものだ!」、「逸脱は別に何やってもいいわけじゃない」、結局ジャズ論が盛り上がって殴り合いになってんな…。
例えるなら「ロック」という言葉一つでパンクとプログレとビートルズをごちゃ混ぜにして語ってるような印象。
「ジャズ」って主語がデカすぎるし深すぎるんだろうな。
このタイミングで「俺の思うジャズ」を押し付けたりすんのもやっぱ違うと思うし。
あのジャズ少年を過剰に持て囃すのもなんか変な気もする。
「次頑張れよ」でいいと思うわ。
(記事に追記しといて、後から考えたら「何か違うな」と思って書き直した次第です)